SNL40を振り返る。


記念すべき40シーズン目。依然、過渡期が続くシーズンではあった。前シーズンにレギュラーになった8人のうちマイク・オブライエン、ジョン・ミルハウザー、ブルックス・ウィーラン、ノエル・ウェルズの4人が1年だけで番組をクビに。4人中3人はウェブビデオで注目されたコメディアンだった。要は次のロンリー・アイランドを探そうとして上手くいかなかったということだ。同時にこの出来事はセス・マイヤーズが築いた洗練された笑いを進化させることは困難だということの証明だった。
番組の舵取りを新たに任されたヘッドライター、コリン・ジョストが行ったことは、ギャグを過激なものに転換することだった。今期から新たに加わった3人のレギュラーが全員、現場からのたたき上げのスタンダップ・コメディアンだったことでもその狙いが分かる。ちょっと前には無かった物議を醸すギャグに、客がドン引きすることもあったけど、そんな生の魅力がSNL。次の時代が見えてきたような気がする。
以下、各レギュラーについてメモ。今回は独自集計したコーナー登場率順に紹介したい。

タラン・キラム

44.4%。82年カリフォルニア生まれ。子役として『裸の銃を持つ男 33 1/3』やニコロ・オデオンの子ども向けコメディに出演後、UCLAに入学〜グラウンドリングスで修行。10年にSNL入りで今期5年目。
得意キャラ:ピットブル、ヴィン・ディーゼル、マシュー・マコノヒー
前期にまさかのエース昇格を果たしたタランだが、登場率の圧倒的な高さが証明する通り、パフォーマンスにムラがない。そしてセリフを噛まない(なぜか人気キャラ、ジェバダイアの時は噛むのだが)。過去の人気者と比べて強烈さに欠けるという弱点はあるのだが、常に余力を残しているように見える品の良さはパフォーマー陣の座長に相応しいもの。そしてそれはかつてベルーシよりチェヴィー・チェイスを好んだローン・マイケルズの趣味でもあるのだ。
ベスト・パフォーマンス:ブレイザー(写真)
80年代のドラマの主人公にいがちな熱血刑事と見せかけて、黒人しか殴らないクソ野郎という衝撃のキャラ。タランの好感度の高さと、黒人ライターが多い現体制でなければ作れなかったスケッチ。

セシリー・ストロング


40.0%。84年イリノイ生まれ。カリアーツ卒。セカンド・シティやImprovOlympicで活動後、12年にSNL入り。今期3年目。
得意キャラ:「パーティーで話しかけられたくない子」、元ポルノ女優コンビの片割れ、「ガールフレンド・トークショー」、「男向けのコメディに出てくる一面的な女性キャラ(写真)」
「Weekend Update」のキャスターは1期限りで終わってしまったが、オチ担当がその分増加。加えてほかにセクシーなタイプがいないためセクシー美女、本来の彼女を反映した理屈っぽいサブカル女子、若干色黒なせいか前シーズンまでナシーム・ペラードが主にやっていたヒスパニック、ついでに(美人すぎて違和感があるけど)ホワイト・トラッシュまで一手に演じることになったため、登場率は女子でナンバーワンに。15年のホワイトハウス晩餐会では異例の若さで司会を務めた。リブート版『ゴースト・バスターズ』にも出演。
ベスト・パフォーマンス :オモチャに命が吹き込まれたことに驚く弟(カイル・ムーニー)をウザがる姉
いかにもいそうな感じ! 純粋な演技の上手さという意味では女性キャスト・ナンバーワンであることを痛感した。

キーナン・トンプソン


39.1%。78年アトランタ生まれ。元々子役でニコロ・オデオンの子ども向けコメディや『マイティ・ダックス』シリーズに出演。03年にSNL入り。
得意キャラ:スティーヴ・ハーヴェイ、チャールズ・バークレイ、リック・ロス、ビル・コズビーなど。
通常7年といわれるSNLの出演期間を大幅に延長して12年目を駆け抜けた番組の大黒柱。今期は後輩に出番を譲ることが増えたように思えたのだが、蓋を開けたら堂々第3位。大オチからモブ(この人が凄いのはこれだけルックスに特徴があるのに気配を消せるのだ。しかも面白さは漂わせている!)まで大活躍だった。理由は明白で、過激化しつつあるギャグの毒消し役をニコロの子役出身のタランとキーナンが担わされているから。というわけで、来期にも出演が決定している。
ベスト・パフォーマンス:ビル(写真)
幼児番組『America Rock』の「I’m Just a Bill」のパロディ

ケイト・マキノン

38.7%。84年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学→アップライト・シチズン・ブリゲイト→同性愛ネタ専門コメディ・ショー「Big Gay Sketch Show」→2012年にSNL入り。今期実質3年目。レズビアンであることを公言している。
得意キャラ:エレン・デジェネレス、ジェーン・リンチ、ジャスティン・ビーバー、ドイツのメルケル首相、そしてギンズバーグ最高裁判事とヒラリー・クリントン。
沢山の有名人モノマネをやっているように見えるケイトだが、実際はひとつのキャラ(=キチガイ)しかやっていない。それでいてこの登場率なのだから凄い。彼女こそが番組のストライカーであり、最も才能あるキャストだ。将来、現体制の『SNL』が「ケイト・マキノンが出ていた時代」と言われることは間違いないだろう。 リブート版『ゴースト・バスターズ』にメインキャストでの出演が決定した。
ベスト・パフォーマンス:ジャスティン・ビーバーのカルヴァン・クラインのCM(写真)
ビーバーがCMキャラに起用されるというニュースを受けて速攻で製作されたニセCMでジャスティンを怪演。これがもたらした風評被害でビーバーのスター生命は終わってしまった。

ボビー・モイナハン


36.0%。77年ニューヨーク生まれ。コネチカット大→ アップライト・シチズン・ブリゲイト→ 2008年にSNL入り。味のあるルックスが買われ、ヴィンス・ヴォーンの弟を演じた『人生、サイコー!』や『アニー』など最近は映画出演も増えてきた。
得意キャラ:ドランク・アンクル、マイケル・チェの地元の友人リブレット、ハルク
今期既に7シーズン目の彼だが、何でもこなせる器用なバイ・プレイヤーを激動期の番組が手放すわけがない。来期も出演が決定。加えてコリン・ジョスト脚本作『Staten Island Summer』でも重要な役で出演している模様。  
ベスト・パフォーマンス 金正恩(写真)
痛風でちゃんと歩けない。北朝鮮にバレたら『The Interview』と同じくらいアブなかったキャラ。番組でもそのことがネタにされた。

カイル・ムーニー

32.0%。84年カリフォルニア生まれ。進学したUSCでジェイソン・ライトマンも在籍していたお笑い研究会Commedus Interruptusに入団。ここで出会ったベック・ベネット、ニック・ラザフォードと卒業後にお笑いユニット、Good Neighborを結成。”華のない又吉”とでも呼びたいローテンションなキャラで異彩を放つ。オフビートな笑いを得意とするビデオ芸人だが斬首の嵐を生き残り、今期2年目。前期と比べアンサンブルとしてのスケッチ参加が増えてきた。
得意キャラ:スラッカー高校生クリス、「Inside SoCal」の司会トッド、売れないスタンダップ芸人ブルース(写真)
ベスト・パフォーマンス:ルイスCKと友人気取りの売れないスタンダップ芸人ブルース
つまらないことに自分では気付いていない芸人の哀愁を体温の低いスケッチで披露。
ヴァネッサ・ベイヤー


28.0%。81年オハイオ生まれ。ペンシルヴァニア大 → ImprovOlympic、Annoyance Theater、セカンド・シティといったコメディ劇団→ 2010年にSNL入り。今期5年目。実兄とやってる音楽ネタのネット・スケッチ・シリーズ「Sound Advice」を通じて知り合ったハイムやジェニー・ルイスのMVにも出演。
得意キャラ:ユダヤ系少年ジェイコブ、詩の先生、元ポルノ女優コンビの片割れ、マイリー・サイラス
普通のOLや主婦といった過激でないキャラを得意とすることが災いして一歩後退したかに見えたヴァネッサだったけど、彼女ならではのホンワカした個性を確立したのも確か。ジェイコブとしてはユダヤ系コメディアンの大先輩ビリー・クリスタルとの親子共演を実現させた。ジャド・アパトーの最新監督作『Trainwreck』ではヒロインの親友役として模範演技のようなパフォーマンスを披露している模様。
ベスト・パフォーマンス ロマコメ評論家デイジー・ローズ(写真)
あまり人気が出なかったのか登場は1回きりだったけど最高のキャラ。ロマコメに脳が侵されてスイーツ的な発想しか出来ない!

ベック・ベネット

28.0%。84年イリノイ出身。USC時代にカイル・ムーニーらとGood Neighborを結成、13年にSNL入りした。今期リストラをサバイブして2年目。
得意キャラ:赤ちゃんボス、キャプテン・アメリカ
番組の過激化に若干乗り遅れた感があるベック。しかも急速にオッサン化したことで盟友カイルとのコンビ芸が減ってきている気が……(代わりにカイルはピートと組んだりしている)。但しオッサン臭い顔は、来期激増するであろう共和党予備選絡みのスケッチにおいて、武器になるはず。現男性キャストの中ではリアルな演技が出来る人なので来期は頑張って欲しい。
ベスト・パフォーマンス 赤ちゃんボス
世界的企業のCEOだが身体は赤ちゃんのままの男。妻役のキャメロン・ディアスとの相性が良かったと思う。

ジェイ・ファラオ


26.2%。87年ヴァージニア生まれ。15歳でスタンダップを始めて10年にSNL入り。今期5年目。
得意キャラ:オバマ大統領、カニエ・ウエスト、シャキール・オニール
冒頭のスケッチで、オバマ大統領(写真)を演じるのがお約束。昨年からギャングっぽい役も増えてきた。『BET』アワードの授賞式をラッパーのモノマネでやりきったのを見ると、もっとヒップホップっぽいネタを見たくなる。幸い黒人キャストは過去最高の5人もいるわけだし。
ベスト・パフォーマンス 『Office Christmas Party』
要するに「会社のクリスマス・パーティー」あるあるラップ。ピートとのコンビもイイ感じだったので続編に期待だ。

エイディー・ブライアント


24.9%。87年アリゾナ生まれ。シカゴのコロンビア・カレッジ→ ImprovOlympic、Annoyance Theater、セカンド・シティ →12年にSNL入り。今期3年目。
得意キャラ:「ガールフレンド・トークショー」、リル・ベイビー・エイディー(写真)、トンカー・ベル
彼女もヴァネッサ同様、普通のOLや主婦が得意なことが災いして出番が抑えられがちだった人。しかもホストが黒人男子だったりすると殆ど登場しなかったりする。だがその性格の良さがにじみ出る存在感は番組の一服の清涼剤である。
ベスト・パフォーマンス   「Back Home Ballers」
エイディーが主にネタを書いたと思われる女性キャスト総出演による「実家帰省あるあるラップ」。

ザシア・ザメイタ


24.9%。86年インディアナ生まれ。ヴァージニア大学→ Upright Citizens Brigade Theatre → 13年途中からSNL入り。今期2年目。
得意キャラ:ミシェル・オバマ、リアーナ、ソランジュ、ダンス好きの女子高生ジャネル
前期はジェイ・ファラオとのコンビがメインだったが、むしろ今期はカイルやピートと組まされることが多かった。いわゆるコギャル演技が得意なため、ナシム・ペラードが主にやっていた子どもキャラの後任的扱いに定着。だがその反面、番組の路線変更からは取り残された感も。まだまだ引き出しはありそうなので健闘を期待したい。 
ベスト・パフォーマンス:ダンス好きの女子高生ジャネル(写真)
セクシーなダンスをYouTubeにアップして父親に怒られ、ボーイフレンドを興奮させるというスケッチ。

ピート・デヴィッドソン

23.1%。93年ニューヨークのスタテン・アイランド生まれ。父親は911で亡くなった消防士。高校卒業後スタンダップ・コメディアンとして活動を開始。マリファナ・ネタとおかんネタを得意とする。下積み時代はニック・キャノンによく奢ってもらっていたらしい。今期20歳の若さでSNL入り。
新時代を担うワンダーボーイである。シーズン最終回にコリンにキャストに加わった感想を聞かれて「俺は演技も歌もモノマネも下手だし大変でした〜」と謙遜していたが、逆に言えばありのままの姿で他のキャストや番組視聴者に愛されていたことになる。そういう意味ではアダム・サンドラーの再来になってもおかしくない男。それと顔が若き日のジョン・クライヤーそっくりなので、今のうちに学園映画に出まくってほしい!
ベスト・パフォーマンス:『Christmas Romance』
夫のいるエイミー・アダムスにボードで愛を告白するピート。要は『ラブ・アクチュアリー』のパロディなのだが、後半どんどんシュールなフリップ芸に!

レスリー・ジョーンズ

20.1%。67年テネシー生まれ。コロラド州立大にバスケの特待生で入学し、卒業後はラジオDJを経てスタンダップ・コメディアンに。世代的にはクリス・ロックと同世代の超ベテラン芸人(彼の主演作『トップ・ファイブ』にも出演している)なのだが、昨年の黒人女性パフォーマー・オーディションに挑戦。最終選考でザシアに敗れたもののライターとして採用され、「Weekend Update」に1回ゲスト出演も果たした。今期はいきなり2回ゲスト出演したことで途中から正式にパフォーマー兼務に。
47歳でレギュラーになったミス・アメリカン・ドリーム。出てくるだけでオチになってしまうため、登場頻度は決して多くはなかったものの、番組のゴッド姉ちゃんとして強烈な存在感を放った。ケイトとともに『ゴースト・バスターズ』にメイン・キャストでの出演が決定している。
ベスト・パフォーマンス:ミシェル・オバマ凶暴バージョン(写真)
ジェイ・ファラオ扮するオバマが怒るとドウェイン・ジョンソンに変身、そしてザシア扮するミシェルが怒ってレスリーに変身するのだった。あまりにベタなギャグだけど、とても笑えた。

マイケル・チェ


11.1%。83年ニューヨーク生まれ。ラガーディア高校卒業後、スタンダップ・コメディアンとして頭角を現し、昨年ライターチームに迎えられた。『デイリー・ショー』への出演が決まったため、SNLは前期のみで辞めるはずだったのだが、彼の過激なギャグ・センスを愛するコリンの熱望によって呼び戻され、ライター兼「Weekend Update」のキャスターに(まれにスケッチにも登場)。コーナー内でのコリンとのブロマンスめいた掛け合いが女子の人気を呼んだ。
ベスト・パフォーマンス:「Weekend Update」でのビル・コズビーいじり。
黒人同胞にとっては神格化されている業界の長老を血祭りに。客席がどんどん引いていくにも関わらず、口撃を緩めないチェなのであった。今期のSNLをある意味象徴したパフォーマンス。

コリン・ジョスト


9.8%。82年ニューヨークのスタテン・アイランド生まれ。名門ハーヴァード大の伝統あるお笑いサークル、ハーヴァード・ランプーンの部長を務め、05年の卒業とともにSNLのライターに採用された生え抜き組。12年にセス・マイヤーズとの連名でヘッドライターとなり、マイヤーズの卒業によって前期の後半から番組の舵取りを任されることになった。マイヤーズの後任として「Weekend Update」のキャスター役でパフォーマーも兼ねることに。今期2年目。脚本を担当した『Staten Island Summer』がNetflixでこの夏配信予定だ。
ベスト・パフォーマンス 「Weekend Update」でレスリー・ジョーンズにセクハラされている時のコリン
中年黒人女性にセクハラされるイケメン白人男という図式が新鮮だった。

以下、クレジットはされていないものの出演している不思議な人たち。

マイク・オブライエン


2.2%。76年生まれ。ミシガン大→セカンド・シティ→09年にライターとしてSNLに採用され、前期遂にパフォーマーになったものの1シーズンでライター専任に戻されてしまった。だがローン・マイケルズから「自分が中心となって作ったビデオ・スケッチなら出演してもよい」との約束を取り付けたのか、「マイク・オブライエン・フィルム」と題された4本のスケッチで主演を務めた。チェ主導の黒い過激な笑いに対抗するかのような「白い狂気」を撒き散らしたその作品群はどれもハイ・グレード。ある意味、前期より活躍したのでは。来年もこの調子で活躍して欲しい。
ベスト・パフォーマンス  『White』
「あとしばらくの間、この国は白人のもの」とアメリカ白人を讃えることで、ひきつった笑いを呼び起こすビデオ・スケッチ。マイクを中心に白人キャストが勢ぞろいした。

ダレル・ハモンド


1.1%。55年フロリダ生まれ。フロリダ大→スタンダップ・コメディアン兼声優→95年にSNL入り→09年に卒業。14シーズンというSNL史上最長レギュラー記録を持つ男が、故ドン・パブロの後任アナウンサーとして番組に帰ってきた。タイトル・コールだけやらせるには勿体ない才能の主であり、しかもこの人レギュラー時代はビル・クリントンのモノマネが鉄板だったのだ。そんなわけで今期はケイト・マキノン扮するヒラリー絡みのコントに2回もビル役で登場。大統領選ネタが激増するだろう来シーズンは更に登場回数が増えるはずだ。

というわけで、来シーズンも楽しみです。