SNL41を振り返る。


シーズン39からの試行錯誤が実った年だった。大統領選を控えたシーズンということもあって、コリン・ジョストとマイケル・チェが主導する「Weekend Update」のノリに他のスケッチも合わせて攻撃的なギャグを展開。評判も視聴率も上昇した。引き続きこの体制で次シーズンも突き進むと思いきや、驚愕の人事異動が。お笑い番組が生モノであることをつくづく思い知らされたのだった。


以下、各レギュラーについてメモ。前シーズンに続いて独自集計した登場率順に紹介したい。


タラン・キラム

43.4%。82年カリフォルニア生まれ。UCLAを経てグラウンドリングスで修行。10年にSNL入りで今期6年目。主演映画『Brother Nature』が9月公開。
得意キャラ:テッド・クルーズ、ドナルド・トランプ(シーズン初期)
長年のキャリア(子役出身)に基づくムラのないパフォーマンスを展開する座長的存在。今期はオチ担当のスケッチが減ったためエースっぽさは薄れたが、スターウォーズやアメコミ絡みのスケッチの殆どは彼とモイナハンの共作であり、本来クリエイター志向の人なのかもしれない。事実、来年公開の『Why We're Killing Gunther』(主演はアーノルド・シュワルツネッガー、共演はコビー・スマルダーズ(嫁)とボビー・モイナハン(親友))で監督脚本家デビュー、Showtimeでシットコムのパイロット版の製作も決定。だが課外活動が裏目に出たのか、番組の天皇ローン・マイケルズから卒業を言い渡されてしまった。でも誰が穴を埋めるんだろうか ……。

ベスト・パフォーマンス:意見広告「トランプを応援する人種差別主義者たち」
一見、善良な一般市民と見せかけて ……タランの腕の上がるタイミングの絶妙さ!



ケイト・マキノン

41.2%。84年ニューヨーク生まれ。コロンビア大学からアップライト・シチズン・ブリゲイトを経て同性愛ネタ専門コメディ・ショー「Big Gay Sketch Show」で注目されて12年にSNL入り。今期実質4年目。レズビアンであることを公言している。
得意キャラ:ヒラリー・クリントン、ギンズバーグ最高裁判事、ドイツのメルケル首相、ロシアの主婦オリヤ、ジャスティン・ビーバー
現体制におけるストライカー。感情移入不可能なイカれたキャラを得意とし(というかそれ以外出来ない)そのままのノリで『ゴースト・バスターズ』にも出演、美味しいところをかっさらった。引き続きクリステン・ウィグ、レスリー・ジョーンズと共演する『Masterminds』(監督はジャレッド・ヘス!)、ヴァネッサ・ベイヤー共演の『Office Christmas Party』、スカ子共演の『Rock That Body』と映画出演が目白押し。果たして契約満期の7年間番組に出演し続けてくれるのか微妙な感じになってきた。でもケイトの才能が最も発揮される場はSNLであり、芸人としては今がピーク。来シーズンは一挙一動を大切に観ていきたい。

ベスト・パフォーマンス:ふたりヒラリー・クリントン(写真)
権力志向、上から目線、必死すぎ。ケイトは、そんなヒラリーの数多い弱点を人間味に置き換えた。もしヒラリーが大統領選に当選したなら、真っ先に感謝を捧げるべき相手はケイトだろう。



キーナン・トンプソン

39.8%。78年アトランタ生まれ。ニコロ・オデオンの子ども向けコメディ番組『Kenan & Kel 』(96〜00年)で既に有名タレントだった。03年にSNL入り。今期13年目。
得意キャラ:スティーヴ・ハーヴェイ、チャールズ・バークレイなど。
ダレル・ハモンドの持つレギュラー最長記録(14年)に迫る番組の至宝。ローン・マイケルズは、SNL休止期間にオンエアされていたバラエティ番組『Maya & Marty 』にも彼を出演させるなど、手放したくない様子。たしかにメインからモブまでこなせるパフォーマンス能力の高さと、エグいギャグをさらりとこなす愛嬌を併せ持つ彼は唯一無二の存在である。なので、いつか来るだろう彼の番組卒業が恐ろしい。

ベスト・パフォーマンス:「ジャッキー・チェンは今どこで何を」(写真)
近年、米国で主演映画が公開されていないジャッキー・チェンを心配するブラザーたちを、番組OBのトレイシー・モーガン(左)と楽しそうに共演。



セシリー・ストロング

38.5%。84年イリノイ生まれ。カリアーツ卒。セカンド・シティやImprovOlympicで活動後、12年にSNL入り。今期4年目。『ゴーストバスターズ』にも脇で出演。
得意キャラ:イバナ・トランプ、「パーティーで話しかけられたくない子(写真)」、元ポルノ女優コンビの片割れ、「男向けのコメディに出てくる一面的な女性キャラ」
演技力の高さを活かして、セクシー美女、サブカル女子、ヒスパニック、ホワイト・トラッシュまで様々なキャラを一手に演じる女子パフォーマー陣の司令塔的存在。相変わらず面白いけど器用さが災いして、狂人ケイトと比べて損をしている感じも。但し番組卒業後に最も成功するのは彼女だろう。年代的にアパトー・ギャングの相手役とかピッタリな感じだし。

ベスト・パフォーマンス :パリ同時多発テロ事件に捧げるフランス語スピーチ



ベック・ベネット

35.4%。84年イリノイ出身。USC在学中にお笑いトリオ、Good Neighborを結成して、13年にSNL入り。今期3年目。
得意キャラ:ジェブ・ブッシュ、赤ちゃんボス
シーズン40でGood Neighborの残る一人であるニック・ラザフォードがライターに加わって、ようやく本格的に活躍 ……と思ったら、ラザフォードは1シーズンでクビに。彼らのオフビートな笑いは今のSNLとは方向性が違うかもしれない。でもベック個人に限って言えば、共和党予備選絡みのスケッチの活躍で出番が増えた。部分的ではあるもののスケッチの狂言回しをすることも増え、タラン離脱後の次シーズンはこうした役回りも増えていくはずだ。

ベスト・パフォーマンス ジェブ・ブッシュ(写真)
モノマネとしては全然似ていないのだけど、小中学にいそうなイジメられっ子というキャラとして再定義することで多くの笑いを獲得。昨年は本命候補とまで言われていたブッシュの早期敗退に影響を与えたかもしれない。



ヴァネッサ・ベイヤー

34.1%。81年オハイオ生まれ。ペンシルヴァニア大からImprovOlympicをはじめとするコメディ劇団を経て、10年にSNL入り。今期6年目。ジャド・アパトー監督作『Trainwreck』では、<ヒロインの同僚役>の模範演技のようなパフォーマンスを披露。『Office Christmas Party』にも出演。
得意キャラ:『フレンズ』のレイチェル(写真)、「明日のニュース」キャスター、ローラ・パーソンズ、ユダヤ系少年ジェイコブ
優秀な後輩に比べると一歩下がっていた感のあったヴァネッサだったけど、6年目にして出演率が大幅にアップ。『フレンズ』のレイチェル(決してジェニファー・アニストンではない)という当たり役が出来たのと、「真面目に演じているけど何処かヘン」という持ち味が買われてビデオネタの主演が多かったからかもしれない。おそらく来期が彼女にとって最終シーズンのはずなので心して楽しみたい。

ベスト・パフォーマンス 架空映画『God is a Boob Man(神はおっぱい星人)』予告編
クリスチャン映画のパロディ。ゲイにウェディング・ケーキを注文された信仰心溢れるパティシエ女子が立ち上がる! ちなみにヴァネッサはユダヤ教徒。



ボビー・モイナハン

33.2%。77年ニューヨーク生まれ。コネチカット大からアップライト・シチズン・ブリゲイトを経て08年にSNL入り。今期8年目。コリン・ジョスト脚本作『Staten Island Summer』やティナ・フェイとエイミー・ポーラー主演の『Sisters』などで脇役を好演。
得意キャラ:クリス・クリスティ、また聞き記者、マイケル・チェの地元の友人リブレット
優秀なバイ・プレイヤーであると同時に作家としても才能溢れる男であることが今期ハッキリしたボビー。スターウォーズやアメコミ映画のパロディ・スケッチは殆ど彼とタラン・キラムで書いていたことが明らかになったのだ。マイケル・キートンやアダム・ドライバーのホスト回の楽しそうな姿も印象に残る。親友タランの離脱によって、どんなポジションになっていくのか気がかりだけど、良い新人をスカウトできない場合、暫定エースになる可能性も少しあると思うのだ。

ベスト・パフォーマンス クリス・クリスティ ニュージャージー州知事のモノマネ
もともとクリスティ知事を演じていた彼だけど、今期は大統領候補選出馬〜トランプの子分化という一部始終をスケッチで再現して笑わせてくれた。



エイディー・ブライアント

30.5%。87年アリゾナ生まれ。シカゴのコロンビア・カレッジからシカゴの複数の即興劇団を経て12年にSNL入り。今期4年目。『GIRLS』ではゾーシャ・マメットの上司役を好演(東京ロケにも参加)。Vimeoオリジナルの短編『Darby Forever』では脚本兼主演を担当した。
得意キャラ:アデル(写真)、キム・デイヴィス
普通のOLや主婦が得意なこと、ホンワカした持ち味が現在のSNLの方向性と合わないため、出番が抑えられがちだったエイディー。しかし長年エイディーと一緒に歌ネタの傑作を作ってきたクリス・ケリーとサラ・シュナイダーのコンビが来期ヘッドライターになることが決定。もしかすると来期、エイディー時代が到来するかもしれない。

ベスト・パフォーマンス  「アデルは思想の違いを超える」
感謝祭のために集まった家族は政治信条がバラバラ。でもみんな大好きなアデルの歌がひとつに結びつけるのだった ……。



カイル・ムーニー

29.2%。84年カリフォルニア生まれ。USCで出会ったベック・ベネットらとお笑いユニット、Good Neighborを結成。今期3年目。
得意キャラ:マルコ・ルビオ、「Inside SoCal」の司会トッド、売れないスタンダップ芸人ブルース
第二のロンリー・アイランドと期待されながら、ロー・テンションな今っぽい笑いのセンスがSNLでは傍流と見做されて損をしているビデオ芸人。しかし『ズーランダー2』にはなかなか美味しい役で出演していたりと外部の評価は高い。来年公開される脚本&主演作『Brigsby Bear』にはマーク・ハミル(!)、クレア・デーンズ、そしてロンリー・アイランドのアンディ・サムバーグが出演する。来期はもっと自由にスケッチを作って弾けてほしいものだ。

ベスト・パフォーマンス:カニエ・ウエストとのラップ対決
才能が無いくせに無謀なことをしでかしてしまう男の哀愁をこれ以上ないほど上手く表現。この人、SNL卒業後は俳優として成功すると思う。



ジェイ・ファラオ

25.7%。87年ヴァージニア生まれ。15歳でスタンダップを始めて10年にSNL入り。今期6年目。
得意キャラ:オバマ大統領、ベン・カーソン(写真)、ジェイZ、ドレイク、シャキール・オニール
オバマ大統領のモノマネが鉄板のジェイだけど、シーズン後半に立て続けにやった黒人コメディアンとラッパーのモノマネシリーズはどちらも圧巻だった。番組がSNLじゃなかったらエースを務めてしかるべき才人である。なのに今期で強制卒業。おそらくShowtimeでジェイミー・フォックス製作のシットコムに主演する計画が進行していたからと思われる。同胞からの人気はとても高いので、頑張ってクリス・ロック(彼もレギュラー時代はさほど好待遇ではなかった)みたいになってほしいものだ。

ベスト・パフォーマンス 
ベン・カーソンという人物の薄気味悪さをあまりに的確に表現。当初トランプと並ぶくらい支持が高かった彼が早々と戦線離脱したのは、もしかするとジェイの功績なのではないか。



ピート・デヴィッドソン

23.5%。93年ニューヨークのスタテン・アイランド生まれ。高校卒業後スタンダップ・コメディアンとして活動を開始。『Trainwreck』の撮影現場で出会ったビル・ヘダーの推薦で20歳の若さでSNL入り。今期2年目。
得意キャラ:本人
新時代を担う才能という認識は変わってはいない。でもひとりだけ歳が若いため、スケッチで共演できる相手が少ないことが、彼のブレイクを遅らせていると思う。タラン&ジェイの補充メンバーはピートと同年代(且つヒスパニックかアジア系)で是非ともお願いしたい。

ベスト・パフォーマンス:『さよならバンティング先生』
フレッド・アーミセンがホストを務めたシーズン・フィナーレで披露された『今を生きる』のパロディ・スケッチ。ピート=呑気というイメージでミス・リーディングを誘っておいての衝撃の展開!



ザシア・ザメイタ

22.1%。86年インディアナ生まれ。ヴァージニア大学からUpright Citizens Brigade Theatreを経て13年途中からSNL入り。今期3年目。
得意キャラ:ミシェル・オバマ
美人で何でもソツなくこなせるタイプのザシアには、自分で笑いを取るよりは場を回すポジションが本当は相応しい。でもそのポジションにはセシリーが座っている ……ということで今期は苦戦。ミシェル・オバマが公の場から消える来シーズンは彼女にとって正念場かもしれない。ここで一発当たり役を掴んでほしいもの。

ベスト・パフォーマンス:「ビヨンセが黒人になった日」
ビヨンセが人としての尊厳を歌った「Formation」発表時の騒動をネタにしたビデオ・スケッチ。白人女子の反応に冷淡なザシアの演技が良かった。



ジョン・ルドニツキー

22.1%。89年ニュージャージー生まれ。USCからグラウンドリングスを経て今期SNL入り。だが1期限りでクビに ……。
得意キャラ:アンダーソン・クーパー
スタンダップ・コメディアンとしての実力が評価されてレギュラー入りしたルドニツキー。なのにネタ発表の機会は与えられず、アクションネタで何回かフィーチャーされただけだった。こういう風に本領を発揮しないで番組を去る人って多いんだよねえ。

ベスト・パフォーマンス:『ダーティ・ダンシング』完コピ
元々の持ちネタだったみたいだけど、これは単純に面白い。



レスリー・ジョーンズ

19.5%。67年テネシー生まれのスタンダップ・コメディアン。シーズン39でライターとして採用され、「Weekend Update」へのゲスト出演が評判を呼び、シーズン40途中からレギュラーに昇格した。今期2年目。
登場率は少ないものの、出れば確実に笑いを巻き起こす番組の秘密兵器。ケイトとともに『ゴースト・バスターズ』にメイン・キャストで出演。人種差別主義者のオールド・ファンからネット上で叩かれたが、それを乗り越える姿によって却って支持を拡大。またバスケの特待生だったジョックス気質を全開にしてオリンピック観戦ツイートをしまくっていたところをNBCに認められ、急遽リオに呼ばれて五輪中継番組のレギュラーになった。49歳にしてアメリカン・ドリーム獲得である。来期はもっとプッシュされるはず。

ベスト・パフォーマンス:「Naked And Afraid」
全裸の男女が森の中に置き去りにされる同名番組のパロディ。身長135センチのピーター・ディンクレイジと身長183センチのレスリーが並んでいるだけで勝負は決まった感があったスケッチだった。



マイケル・チェ

11.5%。83年ニューヨーク生まれ。今期2年目。ライター兼「Weekend Update」のキャスターだが、稀にスケッチにも登場する。
コリンとのコンビネーションが熟成したせいか、観客がチェの過激なギャグ・センスにようやく慣れたのか、「Weekend Update」の人気が急上昇。NBCの選挙特番まで行なう人までに。番組当初から存在する老舗コーナーをヒップなものとして再生したのは間違いなくチェの功績だろう。同じ黒人スタンダップ・コメディアンだったジェイ・ファラオの卒業によって来期はスケッチ参加も増えるはず。



コリン・ジョスト

10.2%。82年ニューヨークのスタテン・アイランド生まれ。05年の卒業とともにSNLのライターに採用され、12年にヘッドライターとなり、シーズン39の途中から「Weekend Update」のキャスターとしても出演。パフォーマーとしては今期3年目。
実はコリンは今期からヘッドライターの座を降りている。でもこれは決して左遷ではなく、寧ろ「コリン、エース化計画」の第一歩なのだと思う。キャスターとスケッチ両方のメインは困難という声もあるけど、ジミー・ファロンはやっていたわけだし。そんなわけで来期はタラン・キラムがやっていたようなシチュエーションの説明役を彼がやっているかもしれない。



以下、今期常連ゲストの面々。

マイク・オブライエン

76年生まれ。09年にライターとしてSNL入り。シーズン39でパフォーマーになったものの、1シーズンでライター専任に逆戻り。だがシーズン40では「マイク・オブライエン・フィルム」と題された4本のビデオスケッチで主演を務めた。今期も2本のビデオスケッチに主演。しかし一緒に仕事をしていた監督コンビ、マット&オズの片割れが亡くなったり既にLAに引っ越しているとの話もあるので、今期限りの出演になるかもしれない。<白い狂気>を感じさせるギャグ・センスは、ありえたかもしれないSNLの未来だった気もするのだが。



ダレル・ハモンド

55年フロリダ生まれ。95年にSNL入りして09年に卒業。前シーズンからタイトルコールを読み上げるアナウンサーとして番組に復帰。だがレギュラー時代に鉄板だったビル・クリントン役を足がかりに、同じく鉄板だったドナルド・トランプ役もタラン・キラムから奪取。何と全21回中12回もパフォーマーとして番組に出演した。これってもはやレギュラーと言えるのでは。そんなわけで、大統領選でヒラリーとトランプどちらが勝っても来期も登場すること間違い無しだ。



ラリー・デヴィッド

47年ニューヨーク生まれ。SNLの対抗番組『フライデーズ』のメインライターとして名を挙げ、80年代の一時期はSNLにもライターとして参加していた。その後製作と脚本を務めた『となりのサインフェルド』と、主演も兼務した『ラリーのミッドライフ★クライシス』のヒットによってお笑い界のレジェンドになった。今期はそっくりさが買われてバーニー・サンダース役で6回登場。「バーニーを演じるために生まれてきた」とまで絶賛された。今期はある意味、ラリーのシーズンだったと言えるだろう。



来期は、今期ヘッドライターだったロブ・クラインとブライアン・タッカーが「Weekend Update」担当チームに入り、代わりにクリス・ケリーとサラ・シュナイダーが就任するとのこと。クリスはゲイでサラは女性。なので、これまでの男子ノリは「Weekend Update」に凝縮されて、本体スケッチは新時代を模索するものになることだろう。そのキーパーソンになるのが新しく入るであろう男子キャスト。即エース就任の可能性もゼロではないと思う。というわけで、来シーズンも期待しています。