悪魔のようなネカマ



 2008年11月12日、中西部のウイスコンシン州。バスケとソフトボールの強豪校として知られるアイゼンハワー高校で事件が起きた。男子トイレに「BOMB 11/14/08(11月14日に爆破)」と書かれた落書きが見つかったのだ。同時に高校に脅迫状がeメールで送られて来た。すぐに警察が出動し、IPアドレスが割り出され、18歳の同校の生徒アンソニー・ステイシルが逮捕された。爆弾はどこにも見つからなかった。だが彼のPCの中には爆弾以上のものが収められていた。
 さかのぼること数ヶ月前。アイゼンハワー高校に通う15歳の少年のフェイスブックにメールが届いた。「ハーイ、あたしカイラ。アイゼンハワー中等部の生徒よ。先輩のことはいつもホールで見ているの。でもアタシってシャイだから話しかけられなくて・・・」女子と付き合ったことがなかった少年は大いに喜んで返事を送った。「君のこと、もっと知りたいな。」やがてメールのやりとりはエスカレートしていった。カイラからメールが来た。「先輩のエッチな写真を送ってもらえますか? かわりに私のも送るから・・・」少年はチンポを露出した裸の写真を送った。彼女からはオッパイを見せた写真が送られてきた。しかし顔は隠れていた。「君の顔が見たいんだ。」「それは無理よ。恥ずかしいから。」
 翌日、学校で友人が少年に笑いながら話しかけてきた。「昨日エミリーって中等部の子からメールが来たんだけどさあ、いきなり俺の裸の写真を送ってくれって言うんだよ、淫乱かい!」少年は家に帰ると怒りをカイラにぶつけた。「お前とエミリーって同じ人間じゃねえの?」彼女から返事が来た。「そんな子知らない! アタシを怒らせたわね!言っとくけどアンタの裸の写真はこっちにあるんだからね。全校生徒のフェイスブックに送りつけてやる! 」「そ、そんなことはやめてくれ!」「わかったわ、友達のアンソニーにフェラしたら写真はファイルから削除するよ。」
 翌日、少年は高校の男子トイレでアンソニーと会い、彼のチンポをしゃぶった。アンソニーはその様子をデジカメに収めていた。その夜、彼からメールが来た。「あの写真のファイル、間違って消しちゃったんだ。証拠がないとカイラに説明できないよ。」少年は再びアンソニーにフェラをした。これでようやく終わった・・・そう思っていたらカイラからメールが来た。「フェラって見ても面白いもんじゃないってことは分かった。やっぱセックスして。しないと今までの写真を全部バラまくから!」少年は考える力を既に失っていた。言われるがままにアンソニーの家に行き、なされるがままになった。再びカイラからメールが来た。「肝心の部分がよく見えないよ!」少年はまたアンソニーとセックスをした。
 当然ながら、カイラとエミリーは存在しなかった。すべてアンソニーの自作自演だったのだ(ヌード写真はネットでひろったものだった)。爆弾の情報を見つけようと彼のPCを調べた保安官が発見したのは、13歳から18歳の少年たちのヌード写真だった。アンソニーは2007年から女子を偽って、アイゼンハワー高校の50人近い男子生徒にメールを送りつけていた。うち31人が”彼女”のリクエストに応じてチンポを露出した写真を送ったことで脅迫を受けており、そのうち7人がセックス・ビデオを撮影されていた。
アンソニーは脅迫やレイプ、チャイルドポルノ所持等の容疑で再逮捕された。すべての容疑に有罪が下されると293年間の懲役刑に服することになるという。マスコミがこのニュースを報じると、ハッカーたちはすぐに7人の実名を探り当ててしまった。7人は全員、ジョックスや生徒会といった学園の主流派に属す生徒で異性愛者だった。7人は現在もカウンセリングに通っているが、大半の少年にはガールフレンドが出来たという。
 アンソニーは、白人ばかりのアイゼンハワー高校で数少ない有色人種の少年だった。彼と姉は幼いときにペルーの孤児院から裕福なステイシル家に引き取られていたのだ。姉はソフトボール選手として学園の主流派に入り込んだが、アンソニーはスポーツが苦手だった。その代わり「アカデミック・デカスロン(「高校生クイズ」のようなもの)」の達人としてギークたちの間で知られていた。また共和党支持者が圧倒的なウィスコンシンで、早くからオバマ支持を訴えていたことでも異彩を放っていたという。しかし夏以降、彼がゲイではないかという噂が広まったことでギーク仲間からもハブられ、学内カーストでは最下層に落ちていた。
 本件について、ローカルテレビのコメンテーターは毒を吐いた。「これだからオバマの支持者は・・・。こんな奴は刑務所でレイプされまくられりゃいい。そうすれば犠牲者の苦しみが分かるだろう。」だが一方で保安官事務所の女性秘書は異なる見解を述べている。「私の高校時代にもいたけど、ああいう子って必ずイジメられるのよ。だって実際は彼の方が絶対クールなんだから。」