特報!米国版『ラブプラス』をキャメロン・クロウ氏が演出

2009年9月3日にコナミデジタルエンタテインメントからニンテンドーDS向けに発売、大ブームを巻き起こした恋愛シミュレーションゲーム『ラブプラス』の米国版を、映画監督キャメロン・クロウ氏(53)が演出することが25日判明した。
早速、『ラブプラス』プロデューサーであるコナミの外田明理氏とキャメロン・クロウ氏に事情を訊いてみた。

外田 最初は、これだけ日本でブームを生んだ商品ですから、米国でも当然イケるだろうと思って、言葉だけを英語に差し替えたバージョンを作ってアメリカの友人たちにプレイしてもらったんですよ。でも「魅力が全然分からない」「俺たちはこんなものじゃときめかない」と。ビックリして「そんなはずはない。日本人はこれをプレイしてみんな甘酸っぱい気持ちになっているんだ!」と怒ったんですけど、「ジャパニーズはともかく俺たちをサワースウィートな気持ちにするのは無理さ」という反応で。「じゃあ、どんなものにときめくんだ? 甘酸っぱい気分になるんだ」と問いつめたところ、口々に「キャメロン・クロウの映画を観るんだな。そうすれば全てが分かるさ」と言うんですよ。わたしは映画に詳しくないもんだから、その日はそのままホテルの部屋に帰ったんですが、偶然テレビでクロウさんの『バニラ・スカイ』が放映されていまして・・・。観て納得しました。これがアメリカ人の求める甘酸っぱさかと。その場でクロウさんに連絡しましたよ。 彼がアカデミー賞も穫っている大物だということは後で知りました(笑)

キャメロン・クロウ  コナミから送られて来たソフトをプレイしてみて驚いたよ。バーチャルな世界で、理想のガールフレンドと永遠に甘酸っぱい時間を過ごす・・・私の『バニラ・スカイ』と全く同じじゃないかって! コナミからは基本コンセプトだけ守れば後は自由にしていいと言われたので、キャラクターは一から作り直した。音楽も妻のナンシーのオリジナルミュージックのほかに、ザ・フーやトッド・ラングレン、ビーチボーイズ、ジョニ・ミッチェルのナンバーを使うことにした。全てのアメリカ人文化系男子が夢中になれるゲームが出来たんじゃないかな。

現状では詳細はまだ秘密とのことだが、今回特別に米国版のヒロインの設定メモをクロウ氏から提供してもらったので、日本語訳しておきたい。

米国版『ラブプラス』のヒロインはこの三人だ! 

ダイアン・コート
年齢は主人公と同い歳。一人称は「わたし」。母を幼くして失い、企業のエクゼクティヴである父に育てられた。成績は常にトップクラスで卒業式では総代を務める、まさに才色兼備を絵に描いたようなお嬢様だが、育ちの良さゆえ真面目すぎて近寄りがたい雰囲気を醸し出しており、男子にとってはまさに「高嶺の花」である。当初は身構えたような対応が目立つが、主人公と出会ったことで飾らない自分本来の姿を見せることができるようになる。血液型はA型。誕生日は9月4日。星座はおとめ座。行きたい国は英国。好きなロックミュージシャンはザ・フーとピーター・ゲイブリエル。飛行機に乗るのが苦手。


ペニー・レイン
年齢は主人公より少し上。主人公が愛するロックバンド「スティルウォーター」のおっかけをしているがグルーピーと呼ばれることを嫌い、バンドエイドと呼ばれることを好む。一人称は「私」。陽気で奔放そうに見える容姿のせいで人に缶ビールのように軽く扱われがちであるが、実は良家の子女で繊細な性格の持ち主であるため、本人は内心深く傷ついているところもある。血液型はO型。誕生日は4月19日。星座は牡羊座。行きたい国はモロッコ。好きなロックミュージシャンはザ・フーとエルトン・ジョン。飛行機に乗ることは好きで、宴会では飛行機のアナウンスの物真似を必ず披露する。


クレア・コルバーン
年齢は主人公より2〜3歳年下。一人称は当初は「アタシ」で、ストーリーが進むにつれ「キキ」になる。勝気で我が強く、常軌を逸した無茶な振る舞いで主人公を翻弄するが、それは落ち込んだ主人公を励まそうとしているが故であり、根はとても素直ないい子である。血液型はB型。誕生日は4月30日。星座は牡牛座。外国旅行は好まず、米国南部をドライブ旅行することを好む。好きなロックミュージシャンはザ・フー、エルトン・ジョン、U2など数えきれないほど。趣味は不眠不休で凝りに凝ったミックスCDを作ること。飛行機に乗ることは大好き(ていうか仕事)。


キャラ設定を見ただけでも胸がときめく米国版の発売日は、感謝祭シーズンになる見込み。なお、ゲーム中のイベントである「彼女とのエリザベスタウン一泊旅行」にちなんで、舞台となったエリザベスタウン(ケンタッキー州)のブラウン・ホテルではラブプラス宿泊プランを用意する。予約時に「スニーカーメーカー勤務です」と伝えておけば、一人旅でもダブルベッドの部屋に案内してくれるそうだ。
on 9/25/2010 by 長谷川町蔵(はせがわまちぞう) |  

あたしの少女時代(プロトタイプ)


 もう9月だというのに、体育館の中はあたしの体温よりも熱かった。「バレー部は室内だからラクだよね」ってよく言われる。けど、野球部の男子が熱中症で救急車を呼ぶ騒ぎがおきたせいで、今週の土曜日の校庭での部活は中止になった。だから現時点で大谷中で一番キツいのは女子バレーボール部だ。顧問の金森先生が休みで自主練になったことをいいことにサーブだけやって遊んでいる男子たちのすぐそばで、ウチらはノアが狂ったように投げるボールを代わる代わるレシーブさせられていた。ノア(ウチらの顧問。先輩から受け継いだアダ名なので何でそう呼ばれるか理由は知らないんだけど)は普段からおかしいくせに暑さでさらにおかしくなっていた。

 こんな何の得にもならない部活をやることを薦めたのはママだ。「ママみたいに背が低いとコンプレックスになるわよ。あんたにそんな苦しみを与えたくないの。」ママは何にも判ってない。バレーボールはもともと背が高い子がやるものだ。ママ似のあたしは身長が145.4センチで見事に止まった。たしかにママの言う通り、これはコンプレックスだ。そしてあたしはその苦しみに加えて部活の苦しみも与えられている。それでもこの夏の市大会では、背が高いだけで動きがトロい先輩たちをフォローしようと地面に近いところを駆けずり回って相手のサーブを沢山拾った。おかげでウチらは薬師中に十年ぶりに勝った。先輩たちが受験準備で引退したので、ノアは2学期からはあたしを中心にチームを作るつもりらしい。

 「あれ、お前ら練習休みじゃないの?」 男子バレーボール部のウザ山が媚びるような高い声をあげた。声の先には翔太君や大輝君、航平君たちAグループの男子たちがいた。真ん中にいるのはもちろん拓海君だ。拓海君(あたしは面と向かっては成瀬君としか呼んだことはないけど)はサッカー部のエースで”大谷中の本田”と呼ばれている(6月までは”大谷中の俊輔”だった)。ちょっと山Pに似ている彼は、サッカーもすごいけどカラオケも上手い。去年の秋のお楽しみ会では、さっき名前を挙げた3人と一緒に東方神起を歌って、上級生を含む女子全員とその母親たちの口から溜息を吐かせた。とにかく超盛り上がった。あたしのママなんかそれから一週間「あんな子があんたの彼氏だったらねえ」と言い続けたっけ。今年はEXILEをやるらしくて陰で練習しているようだ。ウザ山は本当はBグループのくせに人数合わせでメンバーに入れてもらった。有頂天になったウザ山は、EXILEのよく知らないメンバー(たぶんちょっと前までJ SOUL BROTHERSだった方の人だ)になりきって頭にヘンな剃り込み模様を入れてウザさを3割方増していた。

 「ちょっと見に来ようと思ってさあ・・・」拓海君が笑いながら答えた。誰を見に来たんだろう?もしかして薬師中を十年ぶりに破った女子バレーボール新エースのあたし? ・・・なんてバカなことはもう中2なのでさすがに思わない。Aグループの男子はAグループの女子としか付き合わないのだ。拓海君の視線はまっすぐ体育館の壇上を向いていた。その先にはミキちゃんが立っていた。ミキちゃん(あたしは面と向かっては真光寺さんとしか呼んだことはないけど)は可愛い子揃いのAグループでもとびっきり可愛い子だった。マルキューの前で何度もスカウトされたことがあるらしい。でも親がうるさいらしくて読モの仕事とかはやっていなかった。その分、ミキちゃんはお楽しみ会に命をかけていた。去年、青山テルマをピアノで弾き語りした彼女は超素敵で、あたしもウルウルしてしまった。今年は何をやるんだろう? 

 でもミキちゃんのカッコを見たらすぐに分かった。そして耳の中から何だかゾワゾワした音が鳴り出した。いつの間にか壇上にはミキちゃんを中心にAグループの女子が、ウチら内のランキングそのまんまで並んでいた。鶴川駅前でTBSの社員に佐々木希と間違えられた伝説を持つ彩ちゃん、ハナチューにたまに載っている佳奈ちゃん、演劇部員でこの中ではウチらに唯一話しかけてくれる真由ちゃん、お父さんがドイツ人であまりに色が白いことから男子から”トワイライト”と呼ばれている楓ちゃん、双子のナナとハチ(本当は茜と葵っていう)こと根岸姉妹、拓海君の妹の七海ちゃん、そしてテニス部の副将の美咲ちゃん。全員が、ミキちゃんと同じSLYのTシャツに体育用のショーパンを穿いていた。少女時代だ! Aグループの女子たちは少女時代を歌うんだ!

 拓海君たちAグループの男子たちは、Tシャツに大谷中と書かれている以外はさして変わらないカッコをしているウチらをスルーして、壇に向かってワイワイと押し寄せていった。ウザ山が付いていこうとしたので「練習!!」って注意したけど「うるせーんだよチビは」って言われた。

 チームメイトの萌が近づいてきて興奮した口調で耳元で囁いた。
「Aグループ、少女時代の「Genie」歌うんだあ、流行に敏感だよえね、さすが早いよねえ。お楽しみ会、ちょー楽しみ!」
 あたしは三つの点でイラっときた。一つめ。萌はあたしよりずっと可愛い。先入観抜きで見たらもしかすると美咲ちゃんより可愛いかもしれない。でもこのプライドの無さが彼女をBグループに甘んじさせているのだ。ふたつめ。ショウジョジダイと呼ぶな。本当はソニョシデと呼ぶのだ。そして三つめ。全然早くないよ! 「Genie」は韓国では去年の6月に発売されているのだ。

 何で知っているかというとあたしは発売すぐに買っているから。ママの気まぐれのおかげだ。「友達からすごい韓流ショップが新大久保にあるって聞いたんだけど、ひとりじゃ怖くて行けない。あんたボディガードについてきなさい。」150センチちょいの女子がどうやってボディガードの役に立つのだろう? とにかく二人で小田急と山手線を乗り継いでKOREA PLAZAというお店に行った。
 
 そこであたしは少女時代と出会ったのだ。全員がとても綺麗。脚なんかあたしのウエストから伸びてるくらい長い。そして表情が自信満々なのがすごく良かった。CDジャケットの中で並んでポーズを決める彼女たちは、日本のアイドルよりも子どもの頃に見ていた戦隊もののヒーローに似ていた。まるで敵との戦いに勝ったあとのハリケンジャーだ。ママがシン・スンフンのCDを求めて店の奥に姿を消すのを見届けて「Genie」を素早くレジに運んでいった。
 
以来、あたしは彼女たちの密かな、でも熱狂的なファンになった。YouTubeを見て振り付けを完璧にマスターして、それだけじゃ物足りなくなって今度はひとりでKOREA PLAZAまで行ってライブDVDを買った。今や「Genie」なんて、振り付けは目をつぶっていても出来る。あたしほど少女時代を上手く踊れる子はいないはずだ。すくなくともこの大谷中では。でもAグループはどうやって振り付けをマスターしたのだろう?

 壇のすぐ下にポツンと立っている、TシャツはSLYだけど下は制服のスカートの女の子が、あたしと幼稚園から一緒で同じCグループの裕子だってことが分かったとき、あたしは全てを理解した。あたしがコピーしてあげたDVDを、裕子はAグループに横流ししたんだ。ホント、許せない。あの子はあたしを裏切るようなことをしてAグループに仲間入り出来るとでも思ったんだろうか? でも裕子はメンバーには入れてもらえず、壇上にすらあげてもらえなかった。そんなミキちゃんの冷静な判断をさすがと思いながら、同時にゾッとした。もし裕子じゃなくてあたしがDVDを渡したとしても、壇の下で晒しものになっていただろうから。
「みんな、裕子からもらったDVD見て練習したよね? 」ミキちゃんが鋭い声をあげた。「まず曲無しでステップだけ合わせるからね」「えーっ、早く歌いたいよぉ」彩ちゃんが口をはさんだけどミキちゃんはその提案をはね除けた。「まずはムーヴに集中する。曲はそれからよ!」

 「ワンツー!ワンツー!」と横一列に並んだ9人は、掛け声をかけながら踊り始めた。1年間ずっと踊っていたあたしより上手いわけなんかない・・・そんな自信はすぐに吹き飛んでしまった。Aグループは大谷中の少女時代だ。とても綺麗。脚が長くて自信満々だ。体育館の熱気はAグループの体から何かを湧きだたさせてキラキラと彼女たちを輝かせた。それは多分あたしが体からダラダラ流している汗というものとは全然別のものなんだろう。その姿を見てAグループの男子たちは、照れたのか「セクシー!」とかバカな掛け声をかけ始めた。彼女たちは戦いに勝ったんだ。そしてあたしは負けた。

 Aグループの掛け声が止まった瞬間、こめかみに凄い音が聞こえて、同時にあたしは横にふっ飛ばされた。ノアが、よそ見していたあたしに怒ってボールを投げつけたんだ。「そこ!! 何やってんの?」 体育館中に爆笑が沸き起こった。ミキちゃんたち、拓海くんたち、Aグループ全員と、ウザ山と、萌と、裕子すらも大口を明けて笑っていた。笑いは止むことがなかった。ノアは怒るとおネエ言葉になるので、よくウチらから笑われていたけど、でもこの場合、笑われていたのは明らかにこのあたしだ。このまんま死んでしまいたい。体育館の床の上であたしはそのままのカッコで小さくなって横たわっていた。でもミキちゃんの言葉を聞いたら気が変わった。

 「じゃあ、曲流すから歌いながらやろっ」Aグループの男子たちはオオーッと歓声をあげた。このままこんなところにいたら惨めさで本当に死んでしまう。あたしはヨロヨロと立ち上がりノアのところに歩みよった。「先生、すいませんでした。ちょっと外でランニングしてきます」ノアは慌てたような、申し訳ないような顔でこう言った。「おい、いま外なんか走ったら倒れるぞ」「いいんです、ちょっと走ってきますから」あたしは外に逃げ出した。

 校庭は体育館の中よりさらに暑くて、陽の光が地面に照り返して全てが白く見えた。あたしは耳の中からドロっとしたものが流れだすのを感じながら、それでも校庭を走った。黙って走った。体育館の中から「Genie」のイントロが聴こえてきた。この一年間の練習の成果なのか、ランニングのテンポがいつのまにかリズムに合ってきてダンスのようになってしまうのが悲しかった。大谷中の少女時代が、コーラス部分を歌いだした。「そうよ、この地球(ほし)は思い通り/二人なら望み通り美咲さえもお見通し/叶えてあげる」走りながら、よろけながら、踊りながら、あたしはぼんやりこう思った。あたしの未来はきっと、彼女たちとは全然違うものになるだろうって。



※この文章に修正&加筆を加えたものが、小説「あたしたちの未来はきっと」タバブックス)の第1章となります。続きは書籍にてお楽しみください!
on 9/11/2010 by 長谷川町蔵(はせがわまちぞう) |