ゼロ年代のアメリカ映画 私的ベスト100


何か抜け落ちている気がしてしょうがないんだけど(そして厳密にはアメリカ映画ではないものも入っているんだけど)、今日時点のベスト100っつーことで。

その中での不動のベスト3は

『パンチドランク・ラブ』(ポール・トーマス・アンダーソン 2002年)


『レディー・イン・ザ・ウォーター』(M・ナイト・シャマラン 2006年)


『ドニー・ダーコ』(リチャード・ケリー 2001年)


の3本でした。以下、あいうえお順。

25時 スパイク・リー 2002
2番目のキス  ボビー&ピーター・ファレリー 2005
50回目のファーストキス  ピーター・シーガル 2004
Ella Enchanted  トミー・オヘイヴァー 2004
Fantastic Mr.Fox  ウェス・アンダーソン 2009
Harold & Kumar Go To Whitecastle  ダニー・レイナー 2004
JUNO/ジュノ  ジェイソン・ライトマン 2007
MILK  ガス・ヴァン・サント 2008
アイアンマン  ジョン・ファブロー 2008
アダプテーション  スパイク・ジョーンズ 2002
アニバーサリーの夜に  アラン・カミング&ジェニファー・ジェイソン・リー 2001
あの頃ペニー・レインと  キャメロン・クロウ 2000
アメリカン・ドリームズ  ポール・ワイツ 2006
アンダーカバー・ブラザー  マルコム・D・リー 2002
アンブレイカブル  M・ナイト・シャマラン 2000
イースタン・プロミス  デヴィッド・クローネンバーグ 2007
イカとクジラ  ノア・バームバック 2005
イングロリアス・バスターズ  クエンティン・タランティーノ 2009
ヴィレッジ  M・ナイト・シャマラン 2004
ウォーク・ザ・ライン きみにつづく道  ジェームズ・マンゴールド 2005
ウォークハード ロックへの階段  ジェイク・カスダン 2007
ウォーリー  アンドリュー・スタントン 2008
ウォッチメン  ザック・スナイダー 2009
エージェント・ゾーハン  デニス・デューガン 2008
エデンより彼方に  トッド・ヘインズ 2002
エバーラスティング 時間をさまようタック  ジェイ・ラッセル 2002
エリザベスタウン  キャメロン・クロウ 2005
エリン・ブロコビッチ  スティーヴン・ソダーバーグ 2000
エルフ サンタの国からやってきた  ジョン・ファブロー 2003
俺たちステップブラザーズ 義兄弟  アダム・マッケイ 2008
俺たちニュースキャスター  アダム・マッケイ 2004
終わりと始まりの4日間  ザック・ブラフ 2004
かいじゅうたちのいるところ  スパイク・ジョーンズ 2009
キミにあえたら!  ピーター・ソレット 2008
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン  スティーヴン・スピルバーグ 2001
キューティ・ブロンド  ロバート・ルケティック 2001
キングコング  ピーター・ジャクソン 2005
恋は邪魔者  ペイトン・リード 2003
恋は負けない  エイミー・ヘッカリング 2000
恋人にしてはいけない男の愛し方  トミー・オヘイヴァー 2001
ゴースト・ワールド  テリー・ツワイゴフ 2001
ゴーン・ベイビー・ゴーン  ベン・アフレック 2007
サイドウォーク・オブ・ニューヨーク  エドワード・バーンズ 2001
サイン  M・ナイト・シャマラン 2002
サウスランド・テイルズ  リチャード・ケリー 2006
シー・ビスケット  ゲイリー・ロス 2003
ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲  ケヴィン・スミス 2001
シン・シティ  フランク・ミラー&ロバート・ロドリゲス 2005
スーパーバッド 童貞ウォーズ  クレイグ・モットーラ 2007
ズーランダー  ベン・スティラー 2001
スクール・オブ・ロック  リチャード・リンクレイター 2003
スタスキー&ハッチ  トッド・フィリップス 2004
スパイダーマン  サム・ライミ 2002
スパイダーマン2  サム・ライミ 2004
スピードレーサー  アンディ&ラリー・ウォシャウスキー 2008
スモーキング・ハイ  デヴィッド・ゴードン・グリーン 2008
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド  ポール・トーマス・アンダーソン 2007
セイブド!  ブライアン・ダネリー 2004
ゾディアック  デヴィッド・フィンチャー 2007
第9地区  ニール・ブロムカンプ 2009
チアーズ!  ペイトン・リード 2000
チャーリーズ・エンジェル  マックG 2000
トゥモロー・ワールド  アルフォンソ・キュアロン 2006
ドリーム・キャッチャー  ローレンス・カスダン 2003
トロピック・サンダー 史上最低の作戦  ベン・スティラー 2008
ニューワールド  テレンス・マリック 2005
脳内ニューヨーク  チャーリー・カウフマン 2008
ハイ・フィデリティ  スティーヴン・フリアーズ 2000
バス男  ジャレッド・ヘス 2004
ハッスル&フロウ  クレイグ・ブリュワー 2005
ハッピー・エンディング  ドン・ルース 2005
バニラ・スカイ  キャメロン・クロウ 2001
ハルク  アン・リー 2003
パンズ・ラビリンス  ギレルモ・デル・トロ 2006
ファウンテン 永遠につづく愛  ダーレン・アロノフスキー 2006
ファム・ファタール  ブライアン・デ・パルマ 2002
プッシーキャッツ  ハリー・エルフォント&デボラ・カプラン 2001
ブラック・スネーク・モーン  クレイグ・ブリュワー 2007
ブリック  ライアン・ジョンソン 2005
プレステージ  クリストファー・ノーラン 2006
ブロークバック・マウンテン  アン・リー 2000
ヘアスプレー  アダム・シャンクマン 2007
ボクらのママに近づくな!  ブライアン・レヴァント 2005
ホットチック  トム・ブラディ 2002
マーゴット・ウェディング  ノア・バームバック 2007
マルホランド・ドライブ  デヴィッド・リンチ 2001
ミーン・ガールズ  マーク・ウォーターズ 2004
ムーラン・ルージュ  バズ・ラーマン 2001
無ケーカクの命中男 ノックトアップ  ジャド・アパトウ 2007
もしも昨日が選べたら  フランク・コラチ 2006
モンキー・ボーン  ヘンリー・セレック 2001
ライフ・アクアティック  ウェス・アンダーソン 2004
リトル・ミス・サンシャイン  ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ヴァリス 2006
ルーニーチューンズ:バック・イン・アクション  ジョー・ダンテ 2003
レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード  ロバート・ロドリゲス 2003
ロイヤル・テネンバウムズ  ウェス・アンダーソン 2001
ロスト・イン・トランスレーション  ソフィア・コッポラ 2003

それでは皆さん、良いお年を!
on 12/31/2010 by 長谷川町蔵(はせがわまちぞう) |  

”キック・アス”は実在する!

昨今のハリウッドの流行といえば、何と言っても”スーパーヒーローに憧れる一般人”が主人公のコメディだ。2010年には、日本でも大ヒット中の『キック・アス』をはじめ、ウディ・ハレルソンが哀愁の中年ヒーローに扮した『ディフェンドー 闇の仕事人 』が全米で公開。来年春にはレイン・ウイルソンとエレン・ペイジの共演作『Super』が公開される。

だがこれらは映画スタジオの会議室でゼロから生まれたものではない。立派なモデルが存在するのである。そう、”キック・アス”は実在するのだ。嘘だと思うなら、ニューヨークに旅行した際はコロンビア大学のそばを一日中ふらついてみるといい。必ず”奴”に会えるはずだから。彼の名は”ライフ”。素顔はカルキン三兄弟(特にキーラン)似だという26歳の彼は、黒のアイマスクと黒いコスチュームに身を包んで毎晩エリアをパトロールしている。黒いバックパックの中には携帯電話、ポケットナイフ、ミネラルウォーター、缶詰め、ソックスなどが入っている・・・えっ、缶詰めとソックス? それもそのはず、彼の主な任務は行き倒れのホームレスを助けることだからだ。当たり前だが、彼に特殊能力はない(敢えて言えば、ホームレスが行き倒れになっていそうな場所を見つける能力がそれに当るが)。しかも彼は、さほどコミックに関心がなく、コンピュータ・ギークでも元ストリートチルドレンでもないという。
”ライフ”ことチャイム・ラザロスは、ニューヨーク郊外のラビ(ユダヤ教の牧師)の家で7人兄弟の二人目として生まれた。幼い頃から困っている人やホームレスを見ると手助けせずにはいられないチャイムを見て父は考えた。「私の仕事を継がせられるのはコイツしかいない」。成長したチャイムは、大物ラビを輩出してきたユダヤ教大学の名門イェーシバー大に入学した。ところが彼は1年もたたずに勝手に退学してしまった。彼がやりたい事は人助けであって、宗教の教義を学ぶことではなかったからだ。

「もっと世界を知りたい」。彼の興味は映画へと向かっていた。父から学費を打ち切られた彼は、ニューヨーク大やブルックリン・カレッジの夜間部に通いながら、昼間は大手広告代理店J・ウォルター・トンプソンで使いっ走りのバイトをして学費を稼ぐ日々を送るようになった。チャイムの内部で”ライフ”が生まれたのはこの頃だという。「金で全てが決まってしまう虚飾に満ちた世の中を目の当たりにして、困っている人たちを僕が何とかしなくちゃいけないと思ったんだ」

「映画を勉強するならコロンビア大学に入らなきゃダメだよ」との友人の忠告で、チャイムは猛勉強の末、奨学金を得てコロンビア大映画学科に入学。映画史を学びながら、夜は大学付近をパトロールするようになった。コスチュームは全身ブラック・・・ただしマントは無し(動きづらいから)、ネクタイ有りのクラシカルなコスチュームで(警察から事情聴取を受けたとき、心象がいいため)。スーパーヒーロー、”ライフ”の誕生だ!(”チャイム”はヘブライ語で”ライフ”を意味する)そんなチャイムのユニークな活動を知った映画学科のクラスメイト、ベン・ゴールドマンは大興奮した。「チャイム、お前超クールだよ!」そしてある提案を持ちかけた。「お前と同じような事をやっている奴って他にもいるんじゃないかな?」 二人はコミックショップに張り紙を貼った。「スーパーヒーローをやっている人、連絡求む」そしてMySpaceでサーチをかけスーパーヒーローを探しまくった。その結果、二人は驚きの真実を知る。スーパーヒーローは全米に存在したのだ。

川向こうのニュージャージー州の犯罪多発エリア、ニューア−ク市ではアーミールックに身を包んだ”トシアン”が大活躍していた。5歳から近所をパトロールしていたという彼は、悪と戦うために高校は陸軍高校に入学、その後も海兵隊の特殊部隊に入隊してあらゆるマーシャルアーツや犯罪学、外国語を習得したという生まれついてのヒーローだ。

同じニューヨーク市のブルックリンで活動していたのは、深紅のコスチュームに身を包んだ女性スーパーヒーロー”テリフィカ”だ。彼女の任務は、毎晩ブルックリン中のバーを廻って、泥酔している女性を男どもの餌食にならないように自宅まで送り届けることだ。

マサチューセッツ州のベッドフォードではスーパーヒーロー”シヴィトロン”が6歳の息子”マッド・オウル”(リアル・ヒット・ガール!)と共にパトロールを行い、街に異変がないか目を光らせ続けていた。彼らは皆、他にこんな事をやっている人間がいるとは知らず、孤軍奮闘していたのだ。ベンはチャイムに提案した。「スーパーヒーローの情報交換や親睦を行う団体があってもいいんじゃないの?」
こうして2007年、チャイムの呼びかけによって、スーパーヒーローの団体”Super Heroes Anonymous(無名のスーパーヒーローたち”がタイムズスクエアで結成された。本来、個人行動を好む彼らがチャイムの熱意に動かされて一同に集結したのだ。現在、彼らは月イチで会議を行っているほか、道路掃除や集団パトロールを行っている。チャイムとトシアンが共同でワシントン・スクエアからドラッグディーラーを追い払う作戦を成功させるなど、ヒーロー同士のコラボも盛んだ。現在、加盟したスーパーヒーローの数は全米で250人。男女比率は7:3だという。チャイムの父は語る。「たしかに息子のやっている事は立派だよ。でも父親としては奴にきちんとした定職について家族を持ってほしい。その上で余暇で活動するのなら文句は言わんよ。でも25歳を過ぎてあんなことをメインでやるなんてなあ・・・」そんな父の嘆きをよそに、現在チャイムはベンと共に、無名のスーパーヒーローたちの活動を伝えるドキュメンタリー映画を製作中だという。

ライフから皆へのメッセージ
on 12/30/2010 by 長谷川町蔵(はせがわまちぞう) |  

ネオコンの聖典『水源』を読んでみた。


アメリカの映画や雑誌に接していると、やたらと出てくるのが『水源』という名の小説である。ロシア系ユダヤ人で、ロシア革命によってアメリカに亡命してハリウッドでシナリオライターとして働いていた女性アイン・ランドが1943年に書いたこの長編小説は、文学を超えたある種の思想書として、ネオコンやリバータリアン、新自由主義者にもてはやされている。一方で『ギルモア・ガールズ』では高校生のヒロインに「『水源』? 11歳のときに読んだよ、面白かった。」と言われたり、『シンプソンズ』では「右翼の負け犬のバイブル」呼ばわりされるなどリベラルな人々の評判は芳しくない。こうした二極化した反応はまあ分かるのだけど、ひとつ不思議な事実があるのだ。『水源』はゲイ・ピープルに大人気なのである。えっ、通常リベラル寄りのゲイ・ピープルが何故好きなの? ・・・というわけで、大いなる謎を探るべく2段組1000ページ超(!)の『水源』を読んでみた。

(以下、ストーリー)
いきなり主人公が全裸で登場。彼=ハワード・ロークは建築の天才だが、伝統と宗教が大嫌いなスーパーモダニズム男。教会建築の課題に倉庫のような図面を提出して大学を退学になってしまう(←なぜ単位を落とすだけでなく、退学になってしまうかは謎)。ロークは唯一人尊敬する建築家ヘンリー・キャメロンに弟子入りする。キャメロンはかつてモダニズム建築の旗手だったものの、伝統建築のリバイバルに押されて屈辱の日々を送っていたが、ロークに未来を託すべく全てを叩き込んでから死亡する。一方、ハワードの下宿先の息子で彼に課題を代行してもらっていた凡才ピーター・キーティングは、有名建築家ガイ・フランコンの事務所に入社。フランコンはキャメロンの弟子で才能はそこそこあったのだが、伝統建築リバイバルに魂を売って現在の地位を築いた男だった。

独り立ちしたロークは、自分の事務所を開業してスーパーモダンなガソリンスタンドなどを設計。しかし行き詰まってキーティングの紹介でフランコン事務所に入社するもフランコンと衝突してクビに。一方キーティングはロークに図面を手伝ってもらったコンペで最優秀賞を勝ちとり、一躍若きスター建築家に登り詰める。そんな彼にガールフレンド、キャサリンの伯父で大手新聞ワイナンド新聞の建築コラム担当者(←そんな役職があるのか?)エルスワース・トゥ–イーが接近する。高名な福祉事業家(←アイン・ランドは福祉という概念が理解出来ないので怪しげなものとして書いてしまうのだ)としても知られる彼は、キーティングを若手芸術家の会に誘う。そこに集う人々はキーティングの理解を超えていたが、全員がトゥーイーがプッシュするアーティストだったので彼は大喜びする。

その一方でロークは石切場で肉体労働する身となっていた。実はそこはフランコン系列の石切場だった(←何で設計事務所がそんな施設を持っている?)。そんなところにバカンス中のフランコンの娘ドミニクが通りかかる。おそろしく美人で頭の切れる彼女は、全ての男を軽蔑していたので25歳で処女。ワイナンド新聞の建築コラム担当者(←何で二人もいるのか?)をしながら暇を潰していた。そんなドミニクは、ロークのマッスルボディを見て生まれて初めて性的欲望を抱いてしまう。思いつきでマントルピースを壊してロークに修理を命じる彼女。だがロークは修理方法を指示するだけで別の職人に作業をさせてドミニクと関わろうとしなかった。

プライドを傷つけられたドミニクは、馬上から鞭でロークを叩いてしまう。「あたしは何をしたの?」パニクってその場から逃げ出すドミニク。その夜、ロークがドミニクの部屋に押し入ってきていきなりレイプ! 彼女は彼の腕に抱かれながらこう思うのだった。「これを待っていたのよ〜!」

翌朝、ロークは姿を消した。彼の作品を見た財界人から設計のオファーが寄せられたのだった。この仕事をきっかけに彼の名は建築界で知られるようになっていった。ロークの正体を知ったドミニクは愛を再確認する(←レイプ犯に対して)とともに決心する。「彼のような才能溢れる素晴らしい人物は、きっと業界で傷つけられることだろう。あたしも彼と同じくらいの苦しみを体験しなくては・・・。あたしの最大の苦しみは彼が苦しむことだから、あたしが彼を苦しませればいいのよ!」 こうしてドミニクはコラムでロークの作品を酷評し、コンペで落ちるように働きかけるようになった。そしてロークが落ち込んでいるだろう夜にやってきては、自分を激しく抱くように求めるのだった。そんな事実を知らないトゥーイーもロークの作品をバッシング。代わりにキーティングを褒め讃えるのだった。キーティングは「俺よりあいつの方が明らかに才能があるのに不思議だな」と思いながら喜ぶばかりだった。

やがてドミニクは、ワイナンド新聞のイケメン社長ゲイル・ワイナンドの目に留り、結婚を申し込まれる。ドミニクは下劣な大衆新聞の社長と自分が結婚することが、ロークに大きな苦しみを与えると考えて結婚を承諾する。だがゲイルはドミニクの考える人物とは正反対の男だった。生まれこそ貧しい彼だが、ビジネス界で大成功を収めたことに象徴されるように、何が優れた才能かを見破る力を持っていたのだ(←アイン・ランドは基本的に成金の成功者のことを悪く描かない)。ワイナンド新聞の内容が下衆なのは、大衆がそうだからにすぎなかったのだ(←酷い大衆差別)。ドミニクとの件を知らない彼は、ロークの作品集を見て大興奮する。「奴こそが俺が夢に描いていた建築を作ってくれる才能だ!」ゲイルに自宅に招かれたロークもそんな彼と意気投合。一緒にヨットでクルーズの旅に出る大親友になってしまう。複雑な感情を抱くドミニク。

そんなある日、青い顔をしたキーティングがロークに会いに来た。「化けの皮がはげてきて僕は落ち目だ。いま貧しい人向けの公団住宅のコンペをやっているんだけど、これを取れなかったらもう終わりだ。同業者に疎まれて、公的なコンペに参加出来ないロークは、公団住宅という形式に疑問を抱きながら(←アイン・ランドは貧しい人は努力が足りないのだから、そんな奴らに対して政府が施しを与えるのは悪行との認識を持っている)、これまで研究してきた低コスト建築のノウハウを試す機会と考え、条件つきでキーティングの代わりにコンペ用の設計を行うことを了承する。その条件とは「自分の名前を伏せること」「コンペに勝った場合、設計図は絶対いじらずに完成させる」ことだった。天才なので当然コンペに勝利するローク。しかしキーティングの元にはトゥーイーの取り巻きの建築家やアーティストがやってきて、元の計画にゴタゴタと装飾を施して建物は全く異なったデザインに仕上がってしまう。建物は着工〜建築に移され、それはロークの知るところとなった。

ロークは決意する。「これは世の中にあってはならない建物だ!」彼は建築現場に侵入して建物を爆破してしまうのだった。逮捕されるローク。その行動を知ったワイナンドは彼を全面支援することを決意。新聞の社説で連日ローク擁護を訴えるのだった(←何で大新聞がひとつの事件について毎日社説を割くんだろう? そして公共物破壊はどうやっても擁護なんてできない) 。案の定、新聞の部数は急降下。正反対の意見をコラムに書いたトゥーイーをクビにする。これに対してトゥイーイーは怠け者の集団である労働組合(←アイン・ランドはそのようにしか捉えていない)を焚き付けて、社員たちはストライキに突入。ワイナンド新聞は廃刊の危機に瀕するのだった。

トゥイーイーのもとに慌ててキーティングがやって来た。「あれは僕じゃなくてロークの作品なんです。」「そんな事はもともと分かっていたよ。」「じゃあ何であいつじゃなくて僕をプッシュしたんですか?」「私はねえ、才能を見抜く力はあるんだが、その才能というものが嫌いなんだ。天才とは、才能がない人間に敗北感を与える悪い存在だ。それに対して私は対抗策を考えた。それが才能がない人間を社会に蔓延させることで、才能というものを相対化してしまうことなのだよ! そしてその評価は私が決める。つまり私が世界の王になるのだ!」なんと、トゥーイーは、『エンタの神様』のプロデューサー的な考えを持った大悪人だったのだ(←資本家ではなく、評論家が最大の悪人というのがアイン・ランドの世界観なのだ)。

やがて裁判が始まった。弁護士をつけずにロークは法定で大演説を行う。「すべての人間にには自分の力を最大限に発揮する無制限の自由と権利がある。私はそれをやったまでです!」感動した陪審員が下した決定は無罪だった(←何で? 政府の金を使って作ったものを破壊したんだよ!) 公団住宅は、ローク信奉者の財界人が買い取り設計図通り、普通の賃貸住宅として再建されることになった。(←アイン・ランド的には、頑張って働いていないから貧乏な奴らが、優先的に良い住宅に入れるという制度は許し難いものなのである)
ワイナンドに、ロークとの過去を、そして今も彼を愛していることを告白するドミニク。ワイナンドは自らの引退と、生まれ故郷ヘルズ・キッチンの再開発の設計をロークに任せることを伝えて去っていくのだった。その数年後、ヘルズ・キッチンで完成直前のスーパータワーの頂上には喜びに満ちたロークとその妻ドミニクの姿があったのだった。(完)

・・・何だよ、この支離滅裂なストーリーは!!  でも何でゲイ・ピープルが大好きかはわかった。ドミニクの屈折しまくった感情とか、ロークとワイナンドの濃すぎる友情とか滅茶苦茶ゲイ好み。ただしこんな単なる喪女の妄想バナが、ネオコンやリバータリアン、新自由主義者にはガチで素晴らしい話と受け取られていることにはゾッとさせられる。そして残念なのはネット界すらも『水源』の影響下にあるということだ。 というのも、現在のネット界の言論をある意味決定づけた雑誌「ワイアード」の発行人R・U・シリアスはアイン・ランドの熱狂的な信奉者だからだ。日本のネット業界の人たちの宗教、歴史、伝統といったものへの無理解や、弱者への非寛容ぶりもアイン・ランドの遠い親戚にあたるのかもしれない。
なお『水源』は、ランド自身の脚本で映画化されている(邦題は『摩天楼』)。主演はゲイリー・クーパーだが、ドミニク役に抜擢されたパトリシア・ニールを妊娠させるというスキャンダルを起こし、何故かニールの方が映画界から一時追放されるという事態に。その後、彼女は作家のロアルド・ダールと結婚したが、今年8月に亡くなっている。

『摩天楼』予告編
on 12/30/2010 by 長谷川町蔵(はせがわまちぞう) |  

エヴリシングクール・ムービーアワード2010

毎年おなじみの恒例企画、今年は過去最大の全12部門を発表します! 最多ノミネートと作品賞は、当然のことながら”あの映画”でした。

撮影賞 
Winner! ハリス・サヴィデス @『Greenberg』
ハヴィエル・アグイレサロベ @『ザ・ロード』
エドゥアルド・グラウ @『シングルマン』
ジェフ・クローネンウェス @『ソーシャル・ネットワーク』
バリー・アックロイド @『ハートロッカー』

『Greenberg』予告編


最優秀セリフ賞
Winner!  「強い力には責任が伴うというけど、無力なら責任は伴わないのか?」@『キック・アス』

マチェーテ、メールしない」@『マチェーテ』
「これから君の想像を超えた事が起きる」@『運命のボタン』
「政府を信じることと国を愛することは違うのさ」@『Harold & Kumar Escape From Guantaramo Bay』

ちょっとだけ出てるで賞
Winner! ガイ・ピアーズ @『ハート・ロッカー』『ザ・ロード』『英国王のスピーチ』

マイケル・シーン @ 『TRON レガシー』
マイク・タイソン @ 『ハングオーバー!』

悪役賞
Winner! マーク・ストロング @『キック・アス』

ジェマイン・クレメント @『Mr.ゴールデン・ボール/史上最低の盗作ウォーズ』
モニーク @『プレシャス』
フランク・ランジェラ @『運命のボタン』
ジャン=マリー・バレストル @『アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ』 

『Mr.ゴールデン・ボール/史上最低の盗作ウォーズ』予告編


優秀バトル賞
Winner! クロエ・モレッツ VS マーク・ストロングとその手下 @『キック・アス』

アーロン・ジョンソン VS クリストファー・ミンツ=プラッセ @『キック・アス』
ノア・リンガー VS デーヴ・バーテル(志村、うしろうしろ!) @ 『エアベンダー』
ジェフ・ブリッジス VS ジェフ・ブリッジス @ 『TRONレガシー』
トム・クルーズ VS ジェイデン・スミス @ MTVムービーアワード

助演男優賞
Winner!  クリストファー・ミンツ=プラッセ @『キック・アス』

クリスピン・グローバー @『アリス・イン・ワンダーランド』
ジョゼフ・ゴードン=レヴィット @『インセプション』
ジェイソン・シュワルツマン(声) @『Fantastic Mr.Fox』
レニー・クラヴィッツ @『プレシャス』

助演女優賞
Winner!  ジュリエット・ルイス @『ローラーガールズ・ダイアリー』

クロエ・モレッツ  @『キック・アス』『グレッグのダメ日記』
エマ・ストーン @ 『ゾンビランド』『ROCKER 40歳のロックデビュー』
アナ・ケンドリック @『マイレージ、マイライフ』
ヘザー・グラハム@『ハング・オーバー!』

主演男優賞
Winner!  ジェシー・アイゼンバーグ @『ソーシャル・ネットワーク』『ゾンビランド』『アドベンチャー・ランドへようこそ』

コリン・ファース @『シングル・マン』『英国王のスピーチ』
ベン・スティラー @ 『Greenberg』
ダニー・トレホ@『マチェーテ』
シャールト・コプリー @『第9地区』

『アドベンチャー・ランドへようこそ』予告編


主演女優
Winner! グレタ・ガーウィグ @『Greenberg』

エレン・ペイジ @ 『ローラーガールズ・ダイアリー』『インセプション』
キャリー・マリガン @『十七歳の肖像』
クリステン・スチュワート @『アドベンチャー・ランドへようこそ』『ランナウェイズ』
ミシェル・ロドリゲス @『マチェーテ』

脚本
Winner! アーロン・ソーキン@『ソーシャル・ネットワーク』

ニール・ブロムカンプ&テリー・タッチェル @『第9地区』
ジェーン・ゴールドマン&マシュー・ヴォーン @『キック・アス』
ジョン・ルーカス&スコット・ムーア @『ハング・オーバー!』
ジェイソン・ライトマン&シェルドン・ターナー @『マイレージ、マイライフ』

監督
Winner!  ウェス・アンダーソン @『Fantastic Mr.Fox』

マシュー・ヴォーン @『キック・アス』
ノア・バームバック @『Greenberg』
デヴィッド・フィンチャー@『ソーシャル・ネットワーク』
ドリュー・バリモア @ 『ローラーガールズ・ダイアリー』

『Fantastic Mr.Fox』予告編


作品賞
Winner! 『キック・アス』

『Fantastic Mr.Fox』
『Greenberg』
『ソーシャル・ネットワーク』
『第9地区』

「エヴリシングクール・ムービー・アワード」殿堂入り
ブレイク・エドワーズ
コリー・ハイム
on 12/29/2010 by 長谷川町蔵(はせがわまちぞう) |  

12月の営業報告

「映画秘宝 2011年 2月号」では連載コラム「サントラ千枚通し」 に加え、特集「クリスマスに大人買いしたい日本未公開Blu-ray&DVD」に協力、DVDスルーの『アダルトボーイズ青春白書』『グレッグのダメ日記』評を担当。それと”学園映画としての『ソーシャル・ネットワーク』”といった趣向のコラムを書いています。これはわりと自信作なので是非読んでください。

どうでもいいハーバード大学トリビア。劇中にも出て来るハーバードの有名な銅像を造った彫刻家の名前をチェスター・フレンチという。そう、あのハーバード大卒のスカしたデュオのユニット名はここから取られているのだ。

Chester French - Ciroc Star feat. Diddy, Jadakiss, and Clinton Sparks

『ハングオーバー』っぽいビデオにディディ&ジェダキスの客演と、仕込みはバッチリなのにセカンドアルバムは未だリリースされず・・・無念。

「ミュージックマガジン 2011年 1月号」ではキッド・カディ『マン・オン・ザ・ムーン2 :ザ・レジェンド・オブ・ミスター・ラジャー』評を担当。

「CDジャーナル 2011年 1月号」では、「アメリカ学園天国」で『グレッグのダメ日記』をフィーチャー。加えて「今こそヒップホップ入門」というミニ特集を手掛けています。ここでもキッド・カディ『マン・オン・ザ・ムーン』評を。それと特集「2010年私のベスト5 CD編/映像編」いずれとも参加しています。

「bmr 2011年 1月号」ではN.E.R.D. 『Nothing』マッドコン 『ベギン』のレヴューを担当。加えてキッド・カディの合評にも参加しています。というわけで今月はキッド・カディ担当月間でした。

「CROSSBEAT 2011年 1月号」には「シネマ酒オン・ザ・ロック」が掲載。お題は 『インセプション』。加えて「2010年ベストアルバム」のアンケートに参加しています。

以上、よろしくお願いします。
on 12/24/2010 by 長谷川町蔵(はせがわまちぞう) |  

今さらながら11月の営業報告を。

「映画秘宝 2010年 1月号」では連載コラム「サントラ千枚通し」 に加え、初DVD化の『フォロー・ミー』、そして『ドニー・ダーコ2』評を担当。『ドニー・ダーコ2』は、ドニーの妹サマンサを主役にしたスピン・オフ作で、リチャード・ケリーが一切関与してないダメ映画ではあるんだけど、何だか憎めない。オリジナルでも妹役をやっていたデヴィー・チェイスがかなり美しく成長してるので、アイドル映画好きは観た方がいいかも。しかし”サマンサこそが兄のことを家族の中で最も理解していた”って設定は無理がありすぎ。お前、小学校で勝ち組生活を謳歌していたろ!

小学校時代


高校を出ました。


「bmr 2010年 12月号」ではブルーノ・マーズについてのコラムとChiddy Bang 『The Preview』評とリル・ウェイン 『俺は人間じゃない』のミニレヴューを担当。

「ミュージック・マガジン 2010年 12月号」ではモナレータ 『フライド・スピーカーズ』評を担当。

「CDジャーナル 2010年 12月号」では、「アメリカ学園天国スペシャル」で『キック・アス』をフィーチャー。加えて『プレシャス』評も。

「CROSSBEAT 2010年 12月号」には「シネマ酒オン・ザ・ロック」が掲載。お題はここでも『プレシャス』。

以上、よろしくお願いします。

on 12/16/2010 by 長谷川町蔵(はせがわまちぞう) |